マグネット、あれこれ
マグネットというのはよくよく考えてみると不思議な物体だ。
パズルのピースがぴったりハマるのも理解できる。
三角コーンをすっぽり重ねられるのも理解できる。
ペットボトルのキャップでしっかり閉められるのも、まぁ理解できる。
しかし、マグネットがぴったりくっつくというのは、磁力がうんたらかんたらというのを知っていなければ、神の力に見えてもおかしくないだろう。
磁力がなんかしてくっつくのは小学校の理科の授業で習ったが、いやしかし、実際目には見えない力なものだし、どういう原理なのか、それを説明されたところでやはり摩訶不思議だ。
マグネットのあのピタッと吸い付くようにくっつく感覚は面白い。
ピタッとくっつくものとして、吸盤なんかもそうだが、吸盤はくっつけるときにグッと力を入れて吸盤と壁の間の空気を抜かないといけない。
しかし、マグネットというのは、くっつけるものであれば近づけるだけで、まるで「ここがいい」とでも言いたげなようにくっつこうとする。
そのくっつく時の勢いによって「パチン」と軽快な音を鳴らす。
この音もまた気持ちが良い。
ピタッと簡単に固定ができるのは気持ちが良い。
レゴブロック同士をくっつける時の感覚や、ペンのキャップを閉める時の感覚、そうやってモノがあるべき位置に戻るというか、人が望んでいる状態に直感的な動作で瞬時に成ってその状態を維持するというのは、人にとってめちゃくちゃ嬉しい。
嬉しいというか、都合がいいというか、人にとって扱いやすい存在というか。
変な話、人の思考から離れていないような存在、とでも言えるだろうか。
これは「便利」とはまた少し違った、人とモノとの関係性なのかもしれない。
例えば、釘で何かを固定する時、それをしようと決断したら、「釘を打つ」という行為をしないといけない。
しかし、マグネットは固定しようと思ったら、環境が揃っていれば特別な動作なく瞬時に「固定」という結果を得られる。
これは、「文字を鉛筆で書く」と「文字をキーボードで打ち込む」との違いにも言える。
「鉛筆で書く」というのは時間が掛かるし、丁寧に書かないと字が汚くなる。
しかし、「キーボードで打ち込む」というのは、慣れれば「鉛筆で書く」より圧倒的に早く、考えたことを瞬時に、かつ、どんな打ち方であろうとどっかのデザイナーがデザインした美しい文字を並べることができる。
実際、「キーボードで打ち込む」のは、マグネットの似た気持ち良さがあるようにも思う。
くっつきたい時にピタッと固定し、離れたい時もプイッと簡単に取れる。
あのマグネットのような感覚は結構大切なのかもしれない。